現在、ヨーロッパの大学で材料系の研究をしております。
リモートワークは、旧正月で中国に帰郷した学生が、2週間の自己隔離を行うように大学で要請されてから、約1カ月後、COVID-19感染による国の緊急事態宣言とともに始まりました。
ヨーロッパの大学でのリモートワーク事情
大学は国の組織であり、国の科学顧問を輩出していることからも、上層部の方針は国の方針に順ずるものと予想できました。
リモートワークの準備期間は約1週間、初期段階では100人以上集まる講義、海外出張の中止要請、リモートにどのように授業を行うか、どのように学生とコミュニケーションを行うかということから始まり、経過とともに人が集まる規模の縮小がんでいきました。
大学は比較的自己裁量による、決定権が多いので、具体的なガイダンスはありませんでした。
予想通り、国の緊急事態宣言が行われる日の朝に、実験装置の停止、建物の閉鎖の連絡が入りリモートワークは始まりました。
コロナで変わった大学の研究
私は実験系の授業であるため、理論系の履修へと差し替えられ、自身の研究は、実験をメインにしているので、方向性の変化が求められました。
授業以外は対人作業はほぼメール、電話で終わるのでリモートワークへの移行はスムースでした。
授業の代わりに、Zoomによる週に1度のworkshopの開催、同じ分野の研究者また企業の開発担当を招き、プレゼンテーションとQ&A、それをまとめ、Webにアップロードする。
研究は、止まっていた論文作成、研究方向性、実験の見直し、学生のテーマの変更、予算申請への準備などを行っています。
学生は自国に帰っているものが多いため、メール、Zoomで週に一回のミーティング、これは成果というより、元気でやっているか確認作業で、研究の過程考察は、すべてのファイルをOnedriveにアップロードさせることにより、逐次に確認が可能になりました。
リモートワークの難しさとは
仕事内容はこれまでと大きく変わらないので、やはりリモートワークは難しさを感じます。問題は以下に集約されてくると考えます。
- 個人的スペースの確保の有無
- 時間感覚の調整
- モチベーションの維持
- 程よい他人とのコミュニケーション
- 職場の寛容さ
オフィスでは、同じ目的を持ったものが集まった最大利益を追求し、個人の最大限のポテンシャルを引き出す場所であり、自動的に仕事がしやすい環境になっています。
通勤、電車に乗る、または車を運転し、オフィスのデスクに座る、という毎日行われる一連の作業は、自身の脳を切り替えるスイッチになっていると痛感しました。
さらに特に子供がいるとどうしても、集中力を欠き、作業に集中できないことが多々あります。
興味のある仕事を行っている場合、時間を忘れて没頭してしまいオーバーワーク気味になることもあります。オフィスは人の動きが目に見えるので、時間的調整が可能になりますが、自宅では難しくなります。
家にはどうしても誘惑が多く、テレビやYoutubeを見ながらでも仕事ができます。自身で目標をもち、それで仕事のクヲリティーが変わらなければ自由な環境で行っても問題ないですが、往往にして水は低いところに流れていきます。自営業、または自分の好きな仕事をしていない場合以外は、モチベーション維持は難しく、仕事の出来不出来の幅が大きくなります。
リモートワークでネガティブになることも
上司や顧客の微妙なしぐさから仕事の満足度、微妙な感情の機微をメール、zoomだけでは読み取りにくく、多すぎるコミュニケーションはプレッシャーになり、反対に少なすぎるコミュニケーションは社会から疎外感を感じます。
環境対応能力は人により違ってきます。75%がある程度適応するまでに1カ月の時間を必要としました。早く適応はできても、今まで同様のパフォーマンスが出来ているかは、疑問に感じることがあります。最後に、リモートワーク前の自分の仕事量の少なさに絶望する事があります。
評価は上司からではなく組織から行う
リモートワークの成功の秘訣は、最終的に組織の寛容性に集約されると思います。通常より、長めの期限、達成可能な明確なゴールと、挑戦が必要なタスクの設定を行うこと。
上司からでなく人事部から、仕事に対するフィードバック、会社組織側が個人に対してのレコグニションによって個人の安心感を生み、仕事を遂行していく原動力になると思います。
個人からではなく、組織からの評価を強調する必要があり、評価方式の変化が求められると思います。さらに仕事の形態をタスク型か、ブーディー型か、上司または同僚と完全情報共有することにより、仕事達成、リスク軽減の可能性が高くなります。カウンセリングを月に1度行うように促進し、有給消化100%を義務付けるなども必要でしょう。
個人としては自宅で仕事の前後にルーティーンを作り、仕事とプライベートのメリハリをつけ、一日に一度は外に出るようにするといった工夫が必要です。